『またどこかで会おうね』 ~ある方が以前勤務していた病院で見たご家族のお話~

これからご紹介するのは、ある方が病院で見たご家族のお話です。

病院で働いていたその方は、掃除をするためにある病室へと入りました。するとその病室では、患者さんとそのご家族が悲しい別れの時を迎えていたのです。

俺さ、以前病院勤務してたんだ。
といっても看護婦や医者とか有資格者じゃないんだけどな。
でさ、掃除しようと思ってある病室に入ったんだよ。
よく知らずに入ったらさ、どうやら患者さんそろそろ・・・って場面だったんだよ。
「まずい部屋に入っちゃったよな。」って思いながらも掃除をしていたんだ。
そしたらさ、旦那さん(40後半位)が寂しそうな笑顔でありがとうって言ってくれるんだよ。
家族としての最後の場面を邪魔したような気がして、
なんか居た堪れなくなって目に見えるところだけ掃除して出てしまったんだ、もう逃げるようにな。
で、部屋から出て廊下を掃除してたら中から声が聞こえてくるのよ。
掃除途中で出てきちゃったから「なんか文句言われて無いかな」って思ってたらさ 旦那が子供(10歳前後)に
「ママにチューしてあげなよ。もう何年もしてないだろ?最後にもう一回な。 …ちゃんと、『ありがとう』『心配しないでね』『またどこかで会おうね』って声掛けろよ?泣いてばかりだとママも心配しちゃうからな。」って言って部屋から出てきたんだよ。

でもさ、その旦那は部屋から出たとたんに、しゃがみ込んで泣き始めたんだよ。
多分子供の前では強がってたんだろうな。
自分が泣いたら子供が余計につらくなるって思ったんだろうな。
旦那が子供に言わせた言葉は、旦那自身が何度も心の中で呟いた言葉なんだろうな。
そう思っていたら全然知らない患者さんの死がとても身近に感じられて涙ぐんでしまったよ。

俺も、最愛の人が亡くなる場面に立ち会うことがあったら
『またどこか出会おうね』って言葉を言いたいな。

この世に生まれてきた人が、みな等しく背負っている運命があります。それは「死」です。そして死は、別れの時でもあります。

つまり人は、この世に生まれて出会った人々と、いずれ必ずお別れしなければならないのです。それが人間の、いやすべての命が背負っている宿命なのです。

でも僕は、それが悲しいことだとは思っていません。なぜなら、その別れの後には、また再会の時がやってくると信じているからです。

病室で別れの時を迎えたご家族も、その場に居合わせた病院勤務の方も、僕と同じく再会の時を信じているのでしょう。

『またどこか出会おうね』

そう人が強く願うなら、必ずまたどこかで出会うのです。

きっと、そうなのです。

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