なんていい話! あるフリーターさんの親切が、親子二人の人生を救ったエピソード

牛丼屋さんの店舗


Photo by Yuya Tamai

これからご紹介するお話は、某巨大掲示板の「今までにあった最大の修羅場」というスレッドに書き込まれた、ある男性の体験談です。

数年勤めた職場を退社したその男性は、その後フリーターをしながら資格の勉強をしていたのですが、ある時、男性がアルバイトしている牛丼屋に、ヨレヨレの格好をした親子がやってきました。

フリーターの男性は、その親子の様子から「どうやら普通の状況ではないようだ」ということに気がつきます。

さて、事の顛末やいかに。

修羅場といえば修羅場なので投下させてもらいます。

少し前、資格とりたくて数年勤めた職場を退社してフリーターしながら資格の勉強してた。
バイト先は牛丼屋で、基本は22時から朝までのシフト。
2年前のちょうど今時、深夜1時頃にある父子が客で入ってきたんだ。

父親は30代くらい。子供は女の子でたぶん2才~3才くらいかな。
深夜にもかかわらず女の子は眠い感じがなく、活発に喋ってた。
お冷を持っていったら父親「ちょっと注文考えさせて下さい」と。

当時は1人シフトで地方都市の国道沿いの店なもんで他に客は無し。
父子の会話が明瞭に聞こえてきた。

「これナホちゃん食べたいなー」

「ナホはこれ食べたいんだなー(財布の中身見て)いいよ、これ頼もうか!」

「ぎゅどんておいしいー?」

「うん、すごくおいしいよー!」

呼び出しが鳴ったので注文を取りに行った。

「すいません、この(小盛の牛丼)をひとつください」

「他にご注文は?」

「以上です」

え、子供の分しかないじゃん。お金ないのかなーと思った。
この父子をよく見れば、父親はけっこう着古したスラックスにヨレヨレのYシャツ。
娘はもう5月も終わる時期なのにスウェットっぽいズボンに毛玉いっぱいついた長袖。
荷物は汚い大き目のリュックひとつ。
明らかに何日かは風呂も入ってないなって感じの風貌だった。

まあでも仕事は仕事なのであまり気にせず、すぐに牛丼を持っていった。
案の定、父親は全く食べずにすべて娘に食べさせていた。

「ナホ、おいしいか?」

「おーいしー!とうっちゃん、とうちゃんは食べないのー?」

「父ちゃんもうお腹いっぱいだから、ナホちゃん全部食べてな」

やばいこれ、なんかコントとかでよく見るアレじゃん!
こんな親子が実際にいるとは・・・・
不憫だ・・・明らかに家も無く職も無くみたいなアレだわな。
さらによく見ると、父親の頬はコケていた。
娘はちょっと髪の毛がボサボサだけどかわいいおかっぱ頭の女の子。
この子に十分に食べさせるために本当に頑張ってるんだろうなとか思った。

でもいくら1人シフトとはいえ「これはサービスです」とか言って
並盛1杯おごってやるとかは考えてなくて、
会計済ませたら出て行くだろうぐらいに思ってた。

そしたら、お腹一杯食べた女の子がすごく眠そうにしてる。
これはもう長時間滞留だね!
5分ぐらいで寝てしまうんだけど、それまで色々と父子で会話してた。
「かあちゃんとねんねしたい」とか「とうちゃん、かあちゃん迷子かなあ」とか。
ちょっと話が見えないんだが、どうやら母親はいないらしい。
眠そうにしながら「かあちゃん・・・」とか呟くの聞いてたら
なんかすげえ不憫に思えてきて、少し偽善っぽい感情が芽生えてきた。

女の子が寝てしまってから自分の車に常備してるブラケットを取りに行き、
店に戻って父親に渡した。

「あの、これ娘さんにかけてあげてください」

「えっ!あっ、いや、すいません、ほんとにすいません・・・ ちょっとこの子眠れたらすぐ出て行きますんで・・・・」

「いつも深夜はほとんどお客さんいないんですよ。起きるまで大丈夫ですよ」

「すいません、ほんとにすいません」

隣りの椅子と膝枕で女の子寝かせた父親が、俺が横通るたびに
「すいません・・・」って頭下げるんだよ。どんだけ低姿勢なんだよと。
たぶん家とかも無い感じなんだろうな。徒歩で来てるし。

結局女の子は6時前に起きて、父親はペコペコ頭を何度も下げながら店を出て行った。
俺はシフトが6時までだったので、交替のバイトに引き継いだ後、6時15分頃に退勤した。
で、車で国道に出て300mくらい自宅の方向に走ったら、父子がいた!
娘の手をつないでとぼとぼと歩いている父親の姿が見えた。
ちょうど通り過ぎるあたりで父親が女の子を抱っこしていた。
なんかね、父親の体に力が入ってないんだよね。
たぶん1日とか2日なにも食べてないような感じ。
フラフラしてるのに女の子を抱っこしようとしてるし。

で、いてもたってもいられなくなったのでちょっと先に車を停めて、
父子のところに走っていった。

「そんなフラフラじゃ娘さん落としちゃいますよ」

「え、あ、大丈夫です・・・・え、さっきの牛丼屋の店員さん?」

「いや店内から気になってたので・・・失礼ですけど行く宛てあるんですか?」

「え、いやー、この子の母親のところに・・・・」

「お母さんの居場所ってどこです?」

「・・・・・(誤魔化し笑い)」

「あの、俺朝食まだなんですよね。で、帰り道のマックでなんか食べようかと思ってたので、一緒にどうですか?」

「あのー、お誘いありがたいんですけども、今持ち合わせがないので・・・」

「持ち合わせがないなら娘さんの朝ごはんが買えないじゃないですか。行きましょうよ。娘さんの朝ごはん御馳走しますから」

「そんな!見ず知らずの方に食事を御馳走して貰ったら」

「いやそんなこと言っても娘さんはお腹すくでしょう?じゃあ行きましょ!」

という会話があって、無理矢理車まで連れて行き、マックへ行った。
車の中では父親がずっと謝りっぱなしだった。
「いやいいですよ。1人でご飯たべるより3人で食べた方が美味しいし」
「すいません、ほんとすいません・・・」
の繰り返しw

マックに入って、女の子に「ホットケーキすき?」と聞くと
「・・・・すき・・・」とのこと。
なのでホットケーキの朝マックのハッピーセットと自分のマックグリドルのセット、
それに父親の分で自分と同じものとソーセージエッグマフィンのセットをもう一つ。
この父親、本当に謙虚というか欲が無いというか、そんだけ頼んでも自分の分は無いと
思っていたらしい。
カウンターで「お水1ぱいもらえますか」とか言ってやんの。
いや2人分は貴方のですって言ったら「そんなのいらないですすいません、すいません」って。

とにかく合計4人前を注文して、会計して品物もらって席に着いた。

「俺、マックグリドル好きなんですよね。で、ナホちゃんにはハッピーセット。あとの残りはお父さんのです」

「え、なんで?そんな、悪いです。私このハッシュポテトあれば・・・」

「そんなちょっとじゃナホちゃん抱っこできませんよ。ハイ食べて!」

その後父親に泣かれた。こんな厚意に出会ったことないって言って。
なんかね、父親も不憫だけど、ナホちゃん(偽名)がもっと不憫でならなかったんだ。

その後、食べながらなんでこんな状況になってるかを聞いた。
どうやら3ヶ月くらい前までは夫婦とナホちゃん以外にもう一人妹がいたそうだ。
ナホちゃんは父親にそっくりで(事実そっくりだった)、妹は母親似。
奥さんは妹の方を溺愛していてナホちゃんにはかなり冷たく当たっていたとのこと。
そして3ヶ月前、奥さんは妹(次女)だけ連れて出て行った。
父親の勤務先は折からの経営悪化で希望退職を募っており、父親はそれに応じた。
というか応じざるを得ない状況に追い込まれて退職した。

わずかな退職金と家計を握っていた奥さんは全てを持って蒸発した。
手元に残されたお金は数万円。そこで父親は痛恨のミスをしていた。
退職の月にすぐ振り込まれるはずの失業手当の振込先を
家計で使っていた(奥さんが握っていた)父親名義の口座にしてしまった。
もちろん振り込まれたお金は下ろせるはずもなく、奥さんが速攻下ろしてしまった。
もちろん家賃も払えずにアパートは追い出されたと。

そこまで聞いて、この父親にも色々問題あるなあと思った。
娘を一人守らないといけないのに詰めが甘すぎる。
でもそんなこと言ってられない。父親はともかくナホちゃんには三食ご飯を食べさせて
着る物もなんとかしなければいけない。事実、もう何日も風呂入ってなさそうだ。
車に乗せたときに思った。ふたりとも、臭い。

とりあえず空腹を満たしたので、我が家に連れて帰った。
父親は相変わらず「いやそんなご厚意は!」とか言ってたけど問答無用。
「とにかくナホちゃんをお風呂に入れてあげましょうよ」と。

我が家はごくフツーの1DKアパート。8畳の洋間と狭いDK、それに風呂とトイレ。
ついてすぐにナホちゃんに「ナホちゃん、しばらくここがナホちゃんのおうちね」
ナホちゃんはあんまりよくわかってないようだったけど、
「ここ、ナホちゃんのおうちー?」とかいいながらローテーブルのところに
ちょこんと座って部屋中を見回していた。
偶然冷蔵庫にカルピスがあったのでそれを飲ませながら、とりあえず父親と話をした。

「もうほんとにすいません!こんなご恩をいただいて・・・」

「何言ってんですか!とにかくナホちゃんが不憫なんですよ お父さん、とりあえずナホちゃんとお風呂入ってきてください」

お風呂からはナホちゃんの楽しそうなキャッキャした声が聞こえてきた。
俺ももう33才なんだが、もし結婚してたらこれくらいの子がいてもおかしくないんだよね。
なんかちょっと家庭的な雰囲気を味わえた。
ここで俺は一つ決断をしていた。
この父子をうちにしばらく住まわせて、父親の職探しと住居探しをさせようと。
まずは職探し。定職について収入が入ってから住居探しだな。

この父親は両親も亡くし、親戚も絶縁していて行くあて無いらしく、蒸発した母親方も
頼れないとのこと。じゃあ新しい生活を2人で始めないといけない。
俺には姉がいて、結婚した旦那が借金を作って離婚し一人娘と一緒に出戻りしてるから
そういう苦労は少しは分かっているつもりだ。
その申し出に、父親は泣きながら何度かありがとうございますって言ってた。

俺は週4回の牛丼屋の夜勤以外は家で資格の勉強をしていたから、
父親が職探しをしている間くらいはナホちゃんの相手をしてあげられる。
俺の当時の収入は、バイト代が手取りで月14万と退職前の預金が200万ほど。
半年くらいは父子を住まわせるくらいはできた。
もし自分の金銭的な状態が厳しかったらとてもこんな提案はできなかったけどね。

資格試験も年2回あったから、1回(半年)くらいは延期できる。
ナホちゃんが笑顔でキャーキャー言ってる姿を見ると、それくらいは許容できると思った。

風呂上がり、ナホちゃんが裸で走り出てきた。
それをバスタオルで捕まえて拭いてあげた。あー俺、なんか父親みたいとか思いながら体を拭いていた。
昼食は簡単に俺が作り、父親にはその後ナホちゃんと一緒に昼寝してもらった。
見ている限り、父親はゆうべから寝てなかったようなので。
父親は夕方になっても寝続けていた。いったいどんだけ寝てなかったんだ・・・。

先にナホちゃんが起きて、俺が遊びの相手をした。
どうやら2才らしく、2才児の遊びなんてわからないので、とりあえずお絵描きをした。
サインペンしかなかったけど、ぐちゃぐちゃに塗りつぶしたり顔らしきもの書いたり2時間ぐらいはお絵描きしていたと思う。
夜7時頃、俺の彼女が駆け付けてくれて、ちょうど父親が起きた。
相変わらず「すいません、すいません」って言いながら。
近くのファミレスで4人で夕食をとりながら、今後の事を話した。

明日はまず父子の服や生活物資を買い出しして、それから職探しをすること。
可及的速やかに仕事を探して就き、収入を得て自立できるようなら部屋を探す。
猶予は4ヶ月。(ほんとは半年でもよかったけど)それまでに必ず探すこと。

翌日、4人で市内のショッピングモールに行った。
まずはフランチャイズの子供服店でナホちゃんの服を一式揃え、そのあとで父親の普段着と就職活動用のスーツなんかを買った。
さらに生活必需品も3倍必要なので、色々と買い足した。
その日だけで全部で7万円ぐらいつかったかな。
彼女が「子供生まれたときの予行」とか言いながら一人張り切ってたな。
それって結婚前提かよ・・・・。
少しオサレな子供服店で、ナホちゃんに俺と彼女からワンピースをプレゼントした。
子供服のプレゼントなんて、姪っ子に買ってあげて以来だ。
まだt(ry

その後の生活は、なんかこう、娘ができたような騒がしさだった。
最初は知らないところに連れてこられて緊張していたようだが、慣れてくるにつれ、走り回るわ壁に壮大なアート書いてくれるわ、ベランダで育てていたプランターの球根引っこ抜いてくれるわでなかなかの腕白っぷりを見せてくれた。
しかし父親はわずか半月で新しい仕事を見つけた。
以前の職場と同じ工場の品質管理の仕事を見つけてきた。面接の結果採用とのこと。
さっそく次の週から仕事に行き、完全な月給がもらえた2ヶ月後にはアパートも
探してきた。うちの部屋に来てから2ヶ月と19日後、父子は新しい部屋に引っ越した。
実は父親とは2才しか離れていなかったんだが、「お兄ちゃんっ!ばいばーい!」と
手を振りながら引っ越していった。

で、引っ越した先がうちのアパートの下階wwwww
今でも少し成長したナホちゃんと遊ぶ日々が続いている。
彼女も休日(平日休み)には相手をしてくれる。
そして今年の末には彼女が嫁に変わる。
「ナホちゃんみたいに腕白な子が欲しい」ともう今から言っている。
もうすでにナホちゃんが娘みたいな存在だから、子供ができても二人目みたいな感覚。
少し寂しいことに、結婚したらもうすこし広い部屋に引っ越す予定だ。
今のアパートから歩いて2分ほどの近所だけどね。
最初は車で10分ほどのマンションにしようかと言っていたんだけど、
嫁が「やっぱナホちゃんの近くにいたいよね」って言ったから、第二候補の近所に。

今月俺の娘が生まれ、ナホちゃんと父親もお祝いに来てくれて騒いだあとにカキコ。
ちなみにナホちゃんの父親とは今でもいい呑み友達です。
最初に買い物でつかったお金も半年もかからず返してくれ、そのお金で今度はナホちゃんが小学生に上がる時にランドセルを買わせてくれと言ってある。

俺の人生に、全くの赤の他人が家族同然に存在になったということで、
このスレに書き込みさせてもらいました。 オワリ

2歳~3歳ぐらいの小さな女の子が行方知れずとなった母親を慕って口にした、「かあちゃんとねんねしたい」「とうちゃん、かあちゃん迷子かなあ」という言葉や、眠そうにしながら呟いた「かあちゃん・・・」という言葉などがあまりに不憫で泣いてしまいました。

このあたりの描写は本当に胸が痛くなります。でも最終的には落ち着いた生活を取り戻したようで、心の底からホッとしました。

それもこれも、このお話を投稿した親切な男性の力が大きいですよね。もし彼と出会っていなければ、お父さんとナホちゃんは一体どうなったことかと思います。

人に親切にを施すというのは、時にちょっとばかり勇気が必要だったりします。困っている人に対して手を差し伸べたくても、それが失礼に当たらないだろうか? 相手のプライドを傷つけてはしまわなか? いらないお節介なのではないか? などと考えてしまい、あと一歩踏み出せないということがよくあります。

実際、僕自身もそうした「一歩踏み出せなかった経験」が過去に何度かあります。でも、このお話を投稿した男性はその一歩を踏み出し、お父さんとナホちゃんを救いました。

ほんの少しの勇気を出せれば、二人もの人間の人生を救える。これって本当にすごいことですよね。

勇気を出して親子を救った男性の優しさと行動力に、心からの賞賛を贈りたいです。

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