なんと高潔な自己犠牲の精神! 命が危ない極限状態で、己の命より他者の命を優先した自衛隊員さん達の話

草津白根山噴火の様子をとらえた画像

記事公開日:2018年1月26日

23日の午前、群馬県の草津白根山が噴火し、草津国際スキー場で雪上訓練中だった自衛隊員の1人がお亡くなりになりました。亡くなったのは陸上自衛隊第12旅団第12ヘリコプター隊の伊沢隆行陸曹長(49)。死因は、飛来した噴石が背中に直撃したことでした。

亡くなられた伊沢隆行陸曹長(ご本人のInstagramより)

伊澤隆行さん(@torabocchin)がシェアした投稿

僕はこの事故を知った当初、「避難行動注に発生した偶発的な事故」と、ごく単純な捉え方をしていました。しかし事故発生から2日後の25日、マスコミの関係者への取材により、意外な事実が判明したのです。

以下は、その事実を報じた産経新聞の記事からの抜粋です。

 陸自によると、伊沢陸曹長は23日午前、スキーの上級者グループの一員として、重軽傷を負った他の隊員7人とともに草津国際スキー場で行われた訓練に参加。山頂付近から滑り始めて数分後に噴火が発生し、コース脇の雑木林に避難したが、そこにも噴石が降り続いたという。伊沢陸曹長は噴石から部下の隊員をかばおうと上に覆いかぶさったところ、背中に噴石が直撃した。その後、軽傷の2人が全員の意識があることを確認し、麓にいた隊員に報告。伊沢陸曹長は搬送中に心肺停止状態になり、病院で死亡が確認された。

引用元:産経ニュース

記事にあるように、伊沢陸曹長は噴火から部下の隊員を守ろうとして噴石の直撃を受けたのです。この事実が報じられるやいなや、ネット上には陸曹長の死を悼む声と、その行動の高潔さを称える声が溢れました。

僕はそうした声を聞き(読み)ながら、ある痛ましい出来事を思い出していました。それは、1999年に起こったT33型ジェット練習機の墜落事故です。

1999年11月22日の午後、航空自衛隊入間基地所属のT33型ジェット練習機が入間川河川敷に墜落し、搭乗していた航空自衛隊のベテランパイロット2名がお亡くなりになりました。

その際、東京電力の高圧送電線を切断し首都圏に大停電を引き起こしたため、マスコミからは被害に対する批判的な声があがりました。しかし事故の詳細を知ると、亡くなられたパイロットさん達が非難どころか賞賛されねばならない方々だとわかります。

事故当日のニュースステーションに出演されていた国際コンサルタントの岡本さんという方は、事故についてお詫びをする防衛庁長官の画像についてコメントを求められてこうおっしゃったそうです。

「私の事務所でも停電のためにコンピュータが止まり、大いに迷惑はしているが、今の報道を見ると、脱出用パラシュートも開かぬままとなっており、脱出のチャンスを失ってまで、住宅地への墜落を回避した可能性が高い。であれば、パイロットの行為は人間の尊厳に満ちたものであり、にも関わらず、まず、この行為に対して、長官が哀悼の意を表しなかったとすれば、ご遺族の方々は、何と思うだろうか、誠に遺憾である」

上記の発言で岡本さんは、「長官が哀悼の意を表しなかったとすれば…」とおっしゃっていますが、実際には防衛庁長官は会見で、亡くなったパイロットへの哀悼の意を表されているようです。

実は墜落の際、T33型練習機のパイロットさん達は「ベイル・アウト(緊急脱出)」と2回叫んでいるのです。1回目のベイル・アウトから13秒後に2回目のベイル・アウトをを通報。つまりパイロットのお二人は、13秒間、脱出の機会を失ってまで被害を最小限に食い止めるための操縦を続けていたのです。

ただ、ここに1つ不可解な点が。それはパイロットのお二人が、なぜ最後に脱出装置を作動させたのかということです。

脱出装置を作動させた結果、お二人は、高度不足のためパラシュート半開きの状態で地面に激突。最低安全高度について熟知しているはずのベテランパイロットさん達が、無駄と知りつつも脱出装置を作動させた理由は一体なんだったのでしょうか?

この疑問については、当のお二人がお亡くなりになっていますので真実を知ることはできません。しかし、ある自衛隊パイロットさんが事故についてのインタビューを受けた際にした発言が、この疑問について納得のいく答えを提示しているように思います。

その発言とは、下記のようなものです。

(※「もし住宅密集地の上空でエマージェンシーに遭遇したら、どうするのか」と問われ)

「被害を最小限にとどめるため、最後まで操縦を続ける覚悟はあります。ただ、最後の瞬間に、わずかでも時間があれば、脱出装置は作動させます。そうしないと、脱出装置を整備した整備員に、要らぬ心配をかけますから」

生命の危機が迫った時、己の命よりも他者の命や心を優先する。事故自体はとても悲しく痛ましい出来事ですが、極限状態において自衛隊員の皆さんが取った行動は、あまりにも美しくあまりにも感動的で、僕は涙を堪えることができません。

自分の命をかけて他人を救う。人間としてこれ以上に崇高な行為があるでしょうか? きっと自衛隊員の方って、普段からそうする覚悟ができているのでしょうね。

最後になりましたが、部下を守ってお亡くなりになった伊沢隆行陸曹長、T33型ジェット練習機のパイロットさん達のご冥福を、心からお祈りいたします。

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